サヨナラダケガ人生ダ

 

サヨナラダケガ人生ダ

 

中国・唐の時代に 于武陵(うぶりょう)と言う詩人がいた その五言絶句に 「勧酒」と言うのがある

勧君金屈巵 満酌不須璽辞 花発多風雨 人生足別離

友人と別れる時の宴で詠んだお酒を勧める歌である

≪君に勧める金屈巵(きんくつし=曲がった取っ手がついた黄金の杯)を

酌辞するを須(もち)いず 花発(ひら)けば風雨多く 人生別離足(た)る≫

つまり「君に黄金のさかずきを勧める なみなみと注いだこの酒を断ってはいけないよ 

花が咲けば 雨が降ったり 風が吹いたりするものだ 人生に別離はつきものだ」と 何のことはない唐詩であるが

名小説家・井伏鱒二の訳にかかると 次のような情感溢れる名訳になってしまう

「コノサカヅキヲ受ケテクレ ドウゾナミナミツガシテオクレ ハナニアラシノタトエモアルゾ サヨナラダケガ人生ダ」

井伏鱒二は 人に揮毫を頼まれると 好んで「サヨナラダケガ人生ダ」と書いたようだ

井伏からひとかどならぬ恩義を受けた太宰治は 井伏の弟子であると言ってもいいくらいだが 

太宰もまた師匠のように 好んで「さよならだけが人生だ」と書き あのような死に方をした

『幕末太陽傳』で有名な映画監督・川島雄三も「さよならだけが人生だ」と この言葉を好んで使った

更にあの感性鋭い詩を数多く遺した詩人・寺山修二も「さよならだけが人生ならば また来る春はなんだろう」と言った

面白いことに この太宰・川島・寺山の無頼派三人とも青森出身である

この繚乱と咲く弘前城の櫻が どこかで関係しているのだろうか

いずれにせよ サヨナラダケガ人生ダは独り歩きしているのであろう

                                                           2004/4/28  花の弘前にて

 

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