広隆寺の弥勒菩薩と十月櫻

 

 

太秦・広隆寺の弥勒菩薩と十月櫻

 

国宝第一号の弥勒菩薩さまがいらっしゃるのは 太秦の広隆寺である

宝物殿の中央に位置し 私は東京から どのくらい数多く通ったことだろうか

日常茶飯事に疲弊し 仕事に人間関係に疲れて来ると 必ずお逢いしたくなるこの仏の魅力は

やはり優しさなのであろうか 本来の弥勒信仰とは現世でのご利益とまるで関係がない

56億7000万年後 下界に降りて来て 衆生を救って下さると言う

半跏思惟しながら 将来どうしたら人間を救えるのかを模索し

仏の世界で 唯一の未来仏なのであり メシアのような不思議な魅力を内包し給ふ

 

御前にぬかずくと 時が経つのを忘れ ずっと手を合わせてしまう

人間は決して滅亡しないと力強く言っておられ 皆々の心の傷口にそっと手を当てて下さっているかのようだ

過去の怨念や戦禍は 必ず乗り切れると 勇気を与え続け この仏徳の微笑を御裾分けして下さっている

 

面白いことに この弥勒菩薩さまの信仰が 民間信仰にも浸透しているのを決して見逃がせない

一般的にはカタカナで『ミロク信仰』と言うのは2種類あり 上生信仰と下生信仰があり

上生信仰は 死後兜卒天(楽土)へ行き 弥勒さまと生きると言うものであるが

下生信仰では現世でひたすらミロクさまの出現を待つと言うものである

この下生信仰が一般に多く出廻り 沖縄の『にらいかない』信仰は この弥勒菩薩と深く結びついている

柳田國男『海上の道』では 農民や漁民と 豊穣の世の出現を望む信仰として 『にらいかない』の信仰になっていると言われた 

又民間信仰の権威・宮田登氏『ミロク信仰の研究』によると 東北地方で一般的にある繭玉信仰がそうであると指摘している

鹿島信仰にも通じると指摘されているから 如何に民間信仰に受け入れられていたかが分かろう

 

いずれにせよ 未来永劫に 豊かな何かをもたらせてくれる仏として 

弥勒菩薩さまの信仰は巾広く伝播しているのである

 

私は 紅葉の時期に伺うのが 大好きだ

聖徳太子ゆかりの寺として 11月22日 紅葉真っ盛りの折

本堂にあたる上宮王院太子堂では

歴代天皇が即位の式でお召しになられた黄櫖色の袍を 美しく着込んだ太子像が公開される『聖徳太子お火焚祭』が行われ

そしてそろそろこの時期あたりから 境内をよく観ると 何とも可愛らしい淡紅色の十月櫻が咲き誇っているのだ

弥勒菩薩さまから頂戴したお駄賃として 境内に楚々と咲く櫻を観るのがとっても好きでならない

 

又こんな事件もあった 昔こんな立派な宝物殿ではない時代 直ぐ傍で弥勒菩薩さまを拝めた

ある修学旅行生が 余りの美しさに感動し 抱きついてしまって あの美しい小指を折ってしまった

破損した部分を必死で探す警察 指をどう処分していいか途方にくれる高校生 そしてようやく警察に返された折損した指

文化財保護法とか窃盗とか 何かの罪で 勿論天罰を受けるとばかり想っていたのに

裁判では 裁判官曰く「弥勒菩薩さまが余りに美しかったから」と 何と無罪の洒落た判決が出たのである

これもこの弥勒菩薩さまのご配慮であったのだろうか

 

華やかな紅葉を見 楚々として 凛と咲く十月櫻を観ながら 弥勒菩薩さまと対座すると 

人への限りなき優しさが 再び充満して来るような思いにあふれて来る

                                                         2002/10/3 記

                                                             真如堂の十月櫻

 

 

 広隆寺の十月櫻 

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