魂の響き 高橋竹山

 

 

 

 

魂の響き 高橋竹山

 

 

 

今から22年前 大學受験で追い込みだった頃

亡くなった母が 「櫻ちゃん 勉強ばかりしてると 頭が馬鹿になるわよ」

と言って その日の朝から喧しかった

 

2時間だけだからと言う母の強引な誘いを受けて 

風を引かぬよう 厳戒態勢で着膨れし

母の後を付いて行った 

 

場所は 渋谷にある教会の地下の『ジァンジァン』

高橋竹山と言う盲目の津軽三味線の名手を聞くと言うのだ

半ば不貞腐れながら こんな大事な時期に三味線かよと ブツブツ一人言を言いながら

開幕を待った すると スポットライトに 女性に手を引かれて

盲目の老人が ヨタヨタと出て来た

 

最初の音 ジァジャ~ン 私は直ぐに凍り付いてしまった

腸に沁み入るとでも言うのだろうか 『三味線じょんがら』を弾き始めた 

太い腕で 力強く叩き始めたと言った方が的確だろうか

圧倒する魂の響き 津軽の地吹雪のような唸り 又或る時は岩木山の雲

私は 最初っから この老人の弾く三味線に完全に魅了されてしまったのだ

 

曲と曲の間に 竹山自身の語りが入る

「ホイド(乞食)が弾くようなおらの三味線 よぐござったなぁ」

「おら小学校を三日で辞めて ボサマ(坊主)から 三味っ子習って 学も なぁんにもね」

「おらの三味線っ子 門付け(一軒一軒廻り歩く)して おぼださけ 上手っくね」

ぼそぼそと 方言そのままで話す言葉の端々に 

何と凄い真実感があるのだろうか 私は圧倒された

 

そして 『三味線よされ』を聴いて 私は感動のあまり涙が止まらなかった

 

高橋竹山は 明治43年青森県小湊で生まれ

 幼児の頃に 麻疹をこじらせ 失明同然となった 時青森が大凶作であった

小学校に入ったが 三日で辞め 近在のボサマから三味線を教えられた

勝手気侭な弾き方で 門付けをして歩き 16歳で独り立ちすると

再び門付けをして 乞食のような生活を続けた

そんな頃竹山19歳の時 親が心配して 17歳の花嫁を貰う

いわゆるカマドを持つことになるのだが 

この奥さんは歌が上手く 「カカァ歌って おらが三味弾いて 米貰って歩いた」と

「門付けだもん 上手くなるも何もねぇ 生活に困って歩いでだんだ」

「糸が切れても 代わりもなも ねもんだから ただ結んで使ってだな」

戦争中は門付けもままならず 浪花節の三味線をレコードで覚え

大陸・満州に渡って 浪曲師の三味線方として 戦場で暮らした

途中再び青森に帰って来て 八戸の盲唖学校に入り 鍼灸師の技術も身につけた

時に34歳 5年がかりの免状だったのである

 

その後 戦後になってから 成田雲竹に師事し 各地を行脚して歩いてから

本格的に上手の部類に入り 漸く自立したのは 

昭和39年 時54歳になってからであった

 

今上手と言われる多くの津軽三味線の若手が活躍しているが

高橋竹山のような響きは 恐らく誰独りとして 聞いたことがないと断言出来よう

音楽はお遊びではないのだから 大好きなジミー・ヘンドリックスも 竹山のような男だった

 

何よりも『津軽の匂い』に拘ったのである

 

後から知ったのだが あの時 竹山の手を引いて来た若い女性は 

当時高橋竹与と言う内弟子であって

この彼女が 二代目竹山の名跡を継いだと言う

 

東京出身の竹与に 熾烈を極めた稽古をつけたらしいが

母と聞いた時 竹与も後から演奏をした 

驚くことに技術的には 遥かに師匠を凌いでいたかと思う

然しながら 津軽の表現は 撥捌きの驚くべき速さなどではなく

強靭な精神性にあったような気がしてならない

そこには 技術を凌駕する何かがあるのだろう

 

魂を籠めた一撥一撥が 津軽への愛情で満ちていた

コンサートの帰り 母に深く感謝し

 改めて受験への意欲を燃やした覚えがある

忘れられない母との思い出の一つだ

 

リハビリやら 弁護士やら会社役員を入れた引継ぎやら このブログやら 

弟の教育 弟家族に対する配慮 櫻山チームの打ち合わせ等々

退院から 極僅かだと言うのに 目の廻る忙しさだが 

久し振りに 竹山の真実のCDを聞いて 気合を入れ直した

 

何処となく感じられる弟の配慮も 頼もしいものだ 

 

 

 

<お断り> 竹山の太棹の三味線の音は 技術的に お流し出来ませんでした ご迷惑かと存じますが 全く別個の曲を挿入させて戴いております ご迷惑の際に対しましては 是非音響をお切り戴きたくお願い申し上げます ご協力感謝申し上げます

 

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