藤花伝説

 
 
 
 
       
 
 
 
 
 
藤花伝説
 
 
 
 
 櫻が終わりを告げて 茫然としている心の隙に 悄然と藤の花が咲く 
 
最早話題に出すのが 如何にも遅いような気がする 
 
でもこの時期に やっと櫻が開花した地域もあるのだから 勇気を持って出そう 
 
病院の中にいると どうも季節感が鈍くなるようでいけない 
 
藤の花は 藤色と言うぐらい淡紫色の花が一般的だが 白色も 薄紅色もある花 
 
何処か懐かしく そして美しく そんなお話をしてみたい 
 
母の日に近く それに相応しいハッピーなお話として!
 
 
 
 
 
   古事記の中の藤花伝説>
 
 
 昔 神代の頃 伊豆志袁登売(イズシオトメ)と言う美しい女神を巡って 二人の兄弟の話がある 
 
二人の兄弟は或る約束をした 兄の神秋山之下氷壮夫(アキヤマノシタヒオトコ)は自分になびかないイズシオトメを 
 
もし弟の神春山之霞壮夫(ハルヤマノカスミオトコ)が落とすことが出来たら 裸になり 瓶いっぱいの酒と山海の珍味を 
 
弟の為に用意すると約束したのでした 弟は確かにモノにして見せるとは言ったものの 少々不安を隠し切れなかった 
 
そこで母神に援助を求めた 母神は 一夜で藤の皮の衣や袴 弓矢を作らせ 弟の為に イズシオトメの家につかわせた
 
 弓矢を家の側に点て掛けて置くと 美しい藤の花が咲き これを契機に 弟は女神と結ばれることになった 
 
それを知った兄が 弟を妬み 約束を何一つ果たさなかった 母神はそれを知って怒り 兄を懲らしめた 
 
兄は自分の非を悟り 詫びた 母はそれを赦し 皆は仲良く暮らしたと言う 
 
『古事記』に伝わって 日本文学の中で 最初の花物語となったのである 
 
やはり母のチカラは偉大である証拠であろう
 
 
 

 
 
 
 
  <藤の花のいろいろ>
 
 

藤の花は 古くから愛され かの『源氏物語』に 藤壺が出て来る 

一条天皇の中宮・藤原彰子がモデルになっているとされていて 美しい女性の代名詞のような存在である 

光源氏が 義理の母親である桐壺にそっくりな藤壺に 不倫をしてしまう 

そのくらい美しい人だったのであろう 藤の花に托された麗しい女性だったと言えよう

 

 
 又仁清(にんせい)が創ったとされる国宝『色絵藤花茶壺』(MOA美術館所蔵)など 
 
工芸・絵画・漆器・染色などの幾多も 藤の花にまつわる名作があり それも忘れられない
 
 
 
 更に藤の花には二種類の藤があり ノダフジ系とヤマフジ系とがある 
 
シロノダフジは白く 遅咲きで 花房が40~60cmある 
 
ヤエコクリュウは花房が20~30cmと短く 花色が濃い紫色である 
 
キュウシャクフジは花房が長く 実に2㍍にも及び 花色は薄紫で 花付きがまばらである 
 
アケボノフジは花房が30cmくらいだが 花色が変わっていて 美しい鴇色(ときいろ)から白に変化する 
 
ニオイフジは花房が30cmくらいで くすんだ紅紫色と白色があり 強いいい芳香を発する 
 
ナガサキイッサイフジは花房が20~25cmで 薄紫色をしていて 着花数が多い 
 
ムラサキカピタンは山藤の園芸種で 花房全体が一度に開花し 花が大きいのが特徴である 
 
シロカピタンはムラサキカピタンの白花種である 
 
その他中国にはシナフジがあり アメリカにはアメリカフジやホナガアメリカフジがある 
 
品種が結構多様であることがご理解出来よう 
 
 
 

 

  

      

<最後に換えて>

 

 藤の花にまつわる古事記の伝説は 前述の通りハッピーエンドでめでたしめでたしで終わるのだが 

男性二人から愛され その後悲劇的な結果に終わる物語は 藤の花とは無縁であるが 実は文学史上非常に多い 

劇的要素があるからであろう 能『求塚』などは その代表格である 

菟名日処女(ウナイオトメ)は 二人の男性から求婚される 

悩みに悩んだ挙句 彼女は生田川に 身を投じて死んでしまう 

求塚に葬られたのは 彼女だったことを知る二人の男性は 

その塚の前で刺し違えて死んでしまう 

亡霊が出て来て 生き地獄で苦しむ二人の男性の様子や女の亡霊が出て来て 極めて狂おしい表現がされる 

最後に やがて安らぎを得たようで それぞれの亡者は消えてなくなると言う凄惨だが 美しいストーリーがある 

近代文学では 泉鏡花が『白鷺』の中で 愛する男性と一緒になれない身の上を哀しみ 

言い寄る金満家の男の前で 簪を首に刺し死んだ芸者の話で 

愛の究極を 死と取替えっ子して劇的なストーリーがある 

多分美しい女性に対する永遠の愛のテーマが こうした言わば三角関係なのであろう 

そう思えば 藤花伝説は稀に見る幸福なストーリーで 

日本文学史上 最初の花伝説として存在し 日本民族は まことに華麗で幸福な伝説を持っているものである

 

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