爛漫たる櫻の海 吉野幽春

 

 

                                                                      吉野 中の千本満開
 
 
 
 
                               
 
                               爛漫たる櫻の海 吉野幽春
 
 
 
 
 
 爛漫たる櫻の海・吉野である 近鉄特急に乗り 吉野が近づくにつれ ドキドキする心境 
 
吉野の駅を降りた途端に一気に爆発する感動 ロープウェイに乗り 辺りは下の千本と呼ばれ 
 
早い開花はお山で一番だ ロープウェイは金峯山寺に入る黒門まで 下の千本を一望しながら ゆっくりと登る そ
 
こから吉野の旅館街やお土産屋が続き 国宝・金峯山寺蔵王堂に至る 
 
ひょいと上を眺めると 櫻 櫻 櫻のウェイブである 
 
中の千本と呼ばれる斜面があって 水分神社(みくまりじんじゃ)辺りから 上が上の千本にあたる 
 
更にその裏側を廻ったところに奥の千がある 花期は四月の上旬から 五月の連休直前までだ
 
 
 
 私は最近でこそ 旅館街の中 竹林院群芳園か櫻花壇に宿泊するが 
 
学生時代はそうではなかった 丸一週間以上も山で過ごす 
 
櫻の山・吉野に居て飽きることはなく ほとんど寝袋に中に泊まり 
 
櫻とともに 息をついて居たように思う 何と幸せな時間だったろうか
 
 
 
 咲き始めも いい 開花から 二分三分 そうしてやがて八分になり 満開となる 
 
満開となった一日だけは 決してどんな風が来ても たった一枚の花びらも散ることはない 
 
毎晩休む場所の樹を換え 山の中を移動しながら 櫻とともに居た 
 
櫻の樹に何度抱き付いたことだろう ぷぅ~んと櫻の樹液の香が堪らなく好きだ 
 
繚乱と咲く櫻の満開で酔い痴れ やがて櫻は散り始める 
 
この散って行く櫻も 大好きである 
 
予感 そして期待から エクスタシーへ ゆっくり来る静かな充足感へ 
 
私はこの山で どのくらい こんな気分を味わったことだろうか そして数十日後花は一枚もなくなる 
 
葉櫻も 何て美しいのだろう 泣きたくなる瞬間だ 
 
私の心は微動だにせず ずっと過ごして居た 山櫻とは一本だけあると 何処か物淋しいが 
 
こうして何万本とある吉野では 山櫻は豪華絢爛となり 山櫻以外 どの櫻も考えられないのだ 
 
気品と言うか品性がいい 大勢の山櫻でも 少しも品性を失うことはない それが山櫻なのだ
 
 
                                              吉野 山櫻花
 
 
 然もよく観ると 山櫻で 一括りには出来ない 
 
葉が紅く多く出る山櫻もあれば 大型でびっしりと花びらがつく大山櫻もある 
 
色ムラがあるのだ 中の千本から 上の千本の満開は 四月の半ば頃であろう 
 
私は飽きずに 何時までも観ていた
 
 
 
 役の行者(えんのぎょうじゃ)は自らが感得し 櫻の大木に蔵王権現さまを彫り上げている 
 
その為に信徒衆では 櫻が言わばご神木であって お参りに来る度に 
 
里から山櫻を持って来ては この周りに植えて行った 
 
その数一山六万本と言われているが 実際は四万には満たない 
 
それでも壮観であろう 四月三日に上の千本の水分神社では 
 
ご神体である農耕の神に捧げる『御田植祭』が行われ 
 
又蔵王堂では四月十一日~十二日に 満開の花を報告する『花供会式(はなくえしき)』が執り行われる 
 
稚児行列などに出くわすと 櫻の精が現れたのかと驚くから 可笑しい 
 
更にこの時期ではないが 蔵王堂で七月七日に 蓮華会(れんげえ)があり 蛙飛びと言う珍しい儀式がある 
 
蔵王権現さまから助けられ 蛙になった男の伝説である 
 
義経の最愛の人・静御前が捕らえられ 一舞舞ったと言われる勝手神社や南朝との深い関係がある如意輪寺 
 
そこから延びている吉野・宮瀧万葉の古道 
 
西行が住んでいた山奥の西行庵などなど 歴史の浪漫が限りなく溢れているのだ
 
 
 
 役の小角(えんのおずの=修験道の開祖役行者)は 
 
元々あった日本式神道に 誇りを持って 外来の佛教を取り入れている 
 
神仏混交の宗教を切り開き 全国に修験道の道を指導して行った 
 
佛教を異物としなかったところが 如何にも日本式らしく 大らかな宗教観は 大きく共鳴をする処である 
 
聖徳太子自身 神道と佛教の融合を考えたではないか
 
山の中に 寝泊りしながら 様々な歴史を観じ入って 
 
何故か懐かしく 私の死後の骨を散骨する場所は 
 
ここ以外ないのではないかとさえ 永く思っていた
 
 
 
 山上の杉林に中に 義経隠れ堂があって そこから下に行く小道がある 
 
辺りが奥の千本と言い 又表の吉野とは違う表情をしている 
 
奥の千本にある西行庵で 幾晩か過ごしたことがある 
 
それこそ望月の頃だったと思う 櫻と月によって明るく 忘れられぬ夜だった 
 
私は櫻と月によって 贅沢に明るい奥の千本を ほとんど寝ずに楽しんだ 
 
そして芭蕉翁の『野晒紀行』や『笈の小文』を思い起こし つくづく西行のセンスに打たれていたものだ
 
 吉野山 奥をもわれぞ知りぬべき 花ゆゑ深く入りならひつつ (西行)
 
              つゆとくと く試みに浮世 すすがばや (芭蕉)
 
 芭蕉は 二度ここを訪れているが 西行庵の直ぐ傍に 実際に今でも 清らかな瀧がとうとうと流れている 
 
更に多くの文人がここを訪れたのであろうが 何日かこの淋しい奥の千本に 
 
果たして何人が泊まったのであろうか そう思うと 何故かとても嬉しかった
 

                                                 吉野 上の千本
 
 
  吉野には 泊まり客が多い所為か 夜櫻見物は 中の千本に限られる 
 
然も誰独りとして 大騒ぎをする人はいない 何日も花の下に暮らすと 食事もろくろく取れない 
 
偶に旅館街に出て この近辺原産の柿の葉寿司とか多少の食料品とか 
 
適当に買い溜めをして 又山へ向かう 途中静御前の逃亡を助けながら 
 
闘って果てた佐藤忠信(歌舞伎の狐忠信)の花矢倉に出くわしたり 
 
奥の千本で 女人結界の碑文を見つけたりすると 
 
適当な山での野宿も 本当に楽しいものだと思ったりする
 
 
 
 皆さまには 決して真似などしないようにして戴きたい 
 
マナーが悪い人が出て来ないとも限らない 吉野の櫻はすべてがご神木だからである 
 
今は少々年齢が来てるから 野宿などは出来まいと思うが 雨の宵は辛いのである 
 
蔵王堂の軒先か水分神社の屋根の下を借りなければなるまい
 
 我が愛読書『山家集』から 西行の歌を数種ご紹介しておきたい
 
               吉野山 櫻にまがふ白雲の 散りなんのちは 晴れずもあらなん
               吉野山 花ふき具して峯こゆる 嵐は雲と よそに見ゆらん
               見る人に 花も昔を思ひでて 恋ひしかるべし 雨にしをるる
               風越の 峯のつづきに咲く花は いつ盛りとも なくや散りけん
               吉野山 こずゑの花を見し日より 心は身にもそはずなりにき
               花を見し 昔の心あらためて 吉野の里にすまんとぞ思ふ
               吉野山 くもをはかりに 尋ね入りて 心にかけし花をみるかな
 
 
                                              吉野山しのびよる夜景
 
 吉野の店先に 木の株が置いてある店がある 吉野葛のお店で 
 
木の株の正体は 藤の花の根っこである 
 
その根を煮炊きして 澱粉を採る 従って吉野葛は高いのである 
 
山羊の糞のような陀羅尼の飲み薬の本場でもあり 
 
柿の葉寿司は 吉野山を下った場所で作られている 
 
吉野~宮瀧の古道を行くと 途中櫻木神社があって 橋に屋根がかかっていて 
 
談山神社の橋と同じ風情をしていて なかなかいい 
 
南朝の夢の跡がある宮瀧の湖は エメラルドグリーンに輝いて 一層浪漫を掻きたてている
 
 是非皆さまには 生涯でたった一度でもいい 吉野の櫻を御覧戴きたいものである
 
 
 
                 http://www.chikurin.co.jp/index.htm宿泊に最高の竹林院群芳園 庭だけでも必見である)
                 http://www.sakurakadan.com/ (文人にこよなく愛される櫻花壇 中の千本ど真ん中にある)
                 http://www.yoshino.ne.jp/yoshinoyama/ (吉野山保勝会のホームページ)
                 http://www.kinpusen.or.jp/ (金峯山寺蔵王堂ホームページ)               

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