奈良 清浄なる櫻

 

 

                                                                        大宇陀町の又兵衛櫻
       
   
 
 
 
       奈良 清浄なる櫻花
 
 
 
 
 実は 古都・奈良には 京都より 遥かに清潔な印象のある櫻が多い 何故そうなのか 随分考えて観た それは個人の域に 入り込まないからではないかと思われる 京都の櫻は 個人の感性に徹底的に入り込んで これでもかと ともに沈潜する何かがあるが 奈良の櫻は 実にあっさりとしている 東大寺・興福寺・薬師寺・法隆寺・唐招提寺 いずれの御寺も 天下国家の平安を祈る御寺である 個人の生老病死の苦しみをともにしてくれそうにない そんな先入観があるからだろうか どこの櫻も 楚々として みなそれぞれに威厳に満ちて咲いている 今回は吉野は 別途特集する都合上省かせて戴いた
 
 
<法隆寺・夢殿の枝垂れ櫻>
 救世観音菩薩さまは 聖徳太子の自画像と言われていて 明治時代フェノロサによって発見されるまでは秘仏とされて来た 八角堂の美しい夢殿に 相応しい櫻がある お堂の直ぐ脇に咲く 白く大型で 威風堂々とした枝垂れ櫻である
 
 

 上記の櫻が 夢殿の櫻である それを私なりに 解釈をしてペイントショップで描くと 下図のようになる 無論デフォルメはある 然しどうしてもそこには 櫻を神々しいものとして思えてならない  会津八一先生が このお堂前にて 『あめつちに われひとりゐて たつことく このさみしさを きみはほほゑむ』と歌ったイメ-ジが こびりついてついて離れないからであろうか 私の絵と言うものは こんな程度のものである 

 
 
<東大寺の櫻>
 東大寺・大仏殿に 櫻などなかろうと言う向きがあるかも知れない どうしてどうして 大仏殿に入って 回廊を見て戴きたい 様々な種類の櫻が実に効率よく配置され 満開の時は見事な調和の美しさを見せてくれる 櫻単体だけだと そう美しく見えない場合がある この回廊には意外と緑が多く その藪の中に櫻が咲いているのである そればかりではない 東大寺から 後ろの方へ廻ると 校倉造りの宝物殿があるが その周辺の八重櫻も見事であるし 更に奥へ行くと 知足院と言う御寺があるが ここに万葉から歌われ継がれて来た 奈良八重櫻の原木があるのだ 幾らかのピンクが入って 感動モノであろう
 
 
<奈良公園の櫻>
 散策するのに ここほど素敵な散策場所を知らない 鹿の糞はあるものの 櫻が満開の折は 処嫌わず花びらが風に舞い 櫻の絨毯を歩くような錯覚に陥る 春日さんを通り 志賀直哉の旧宅跡を抜け 白毫寺(びゃくごうじ) 又は新薬師寺までのコースは幾ら歩いても 飽きることはない 木蓮や雪柳や連翹などの花々も見せてくれる 大好きな散歩コースである
 
          宝蔵院の枝垂れ櫻と藪椿
  
<長谷寺・大野寺・室生寺>
 長谷寺は 牡丹の名所として名高いが 櫻も見事である 山門脇には 大きな枝垂れ櫻がごそっとあって 歓迎して戴ける 大きな長谷大仏を拝み 外に出ると 大師堂があり その辺りは染井吉野や山櫻が満載になっている 上の舞台から眺めると 壮観である 
 室生寺へ向かう手前に大野寺がある ここは枝垂れ櫻が見事で 観るものを圧倒する そこから対岸の崖に描かれた摩崖仏は 東大寺建立の外国の職人が造ったとされている 
 そしてバスに乗って 室生寺まで 橋本屋の脇をすり抜け 太鼓橋を渡ると 本堂が見え その辺り一帯は染井吉野で埋められている 五重塔近辺だけは 気品高い山櫻が見事に咲き誇っている
 
 
 
                                   大野寺の枝垂れ櫻
 

                                                                   長谷寺 全景と櫻
 
<岩船寺・浄瑠璃寺>
 例えば唐招提寺など大きな御寺でもそうであるが どこの御寺でも 櫻の数はそう多くはない だが実にいい位置に配置され 兎に角個性的に見えるから 不思議だ 奈良のなせる業なのだろう 岩船寺から 浄瑠璃寺に行く山道には 石仏がそこここにあり 堀辰雄の小説『花あしび』などに出ていそうである どちらの御寺も大きくはない だが何故か惹かれる 奈良には珍しく 浄土を再現して見せているからだろうか 浄瑠璃寺の入り口にある たった一本の八重櫻が忘れられない
 
<柳生の里>
 ここまで来ると如何にも遠い 江戸時代剣豪の里として 何者からも侵略されたことのない里で 春先に行くと如何にものんびりとしていて そこここに咲く櫻に癒される 正木坂道場の辺りは 今でもピンと張り詰めた空気があって 好きな場所の一つである 名木はないが 花がやたらに多い 剣豪には櫻がよく似合うのである
 
<飛鳥から斑鳩へ>
 聖徳太子は 飛鳥から斑鳩まで通っていたと言う そんな理由で 街道を何度か歩いて観たことがある 浪漫溢れる二上山 飛鳥三山 多くは 未だにのんびりした田んぼ道で 飛鳥寺は太子誕生の御寺である 石舞台辺りには櫻が植えてあり 古代の浪漫にも 櫻はピッタリと似合っていた 巻頭の瀧蔵神社の写真は 乳癌の記事を出した時 話題にさせて戴いたひぃちゃんが撮った写真である 先日長い間音信不通で心配していたが 何とか連絡が取れて 元気であることが分かった 一時の元気はないが それでも懸命に乳癌と闘って頑張っておられた 彼女がおられる場所は 樫原から この道の近辺である 菜の花やゲンゲの花が咲き乱れる中を ひぃちゃんの回復を祈って歩きたいと 心から希っている 聖徳太子さまも 中将姫さまも 弘法大師さまも みんなみんな守っていて下さっている どうか長生きして戴きたいのである 巻頭の写真は その意味で使わせて戴いた
  
<佐保路近辺>
 西大寺から 薬師寺辺りまで 所々に 櫻が見える のんびりと歩き廻るのに ここを逃す手はない 正確には佐保路に当たらないが 西大寺駅から 歩いて程なく 秋篠寺に着く ここの技芸天はおおらかな御仏さまで 大好きである 境内鬱蒼とした林に囲まれているが いいポイントに 櫻が咲いている この近くに あの河島英五が住んでいた 僅かしかない櫻だが 何もかも思い出す御寺の櫻である
 
<その他の櫻>
 奈良は 大勢集まって ドンチャン騒ぎをする場所がない その分静かにゆるりと鑑賞出来るわけである 然もすべて個性的であり 奈良と言う国家鎮護の御寺の特異性が そうした背景を生んでいるのであろう 大宇陀町に 又兵衛櫻と言う見事な枝垂れ櫻があって 毎年の開花がどれほど楽しみだろうか 又櫻井市満願寺には 八講櫻と言う素敵な枝垂れ櫻がある そのほとんどが 信仰と深く結び付いたものだ 尚吉野は 別に特集とさせて戴きたい
 
 奈良の櫻は 地味であるかも知れない でも春の奈良 秋の京都と 私は永い間決めていたくらい奈良の地に咲く櫻の花は みな清らかで 心が洗われる思いがするのである 静かに 櫻とともに過ごせるのがいいのかも知れない                    

 

 

                                           櫻井市の八講櫻

 

 http://shikitei.co.jp/ (いつもお世話になっている料理旅館・四季亭)

 http://www.narahotel.co.jp/ (こちらもよく利用させて戴く 朝粥が美味しい 奈良ホテル)

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