北の花を追いかけ 津軽海峡

                                  
                                                                                                  津軽から 船上で観た松前の街
 
    北の花
 
  未だ暗いうちに 白神に行く ブナの新芽が出たばかり 美しい新芽 そこここに山櫻が咲いています 山を降り 岩木川沿いに走って行くと 次第になだらかな田園に出ました 川の土手には 鬱金(薄緑の櫻の花びら)や八重の関山(最も多い八重櫻)や一葉(花の中心に緑の若芽があるような楚々とした八重櫻)が 飛び飛びに移植されていて 弘前城址公園の近くに来ていました お城を下から見上げると 既に染井吉野の花の盛りを終え ほとんどの花びらは 花嵐となって天空に飛来して消えていました 岩木山を左手に従えて 一路龍飛(たっぴ)を目指すことに 津軽の春は何もかも 情念で溢れ 詩情がいっぱいです 瑞々しい生命の歓喜が爆発し ひょんなところで観掛ける山櫻は 泣きたくなるような美しさでした ピンクだけでは美しくなく 新緑があるから 一層引き立つものです 連翹(れんぎょう)や蒲公英(たんぽぽ)の黄色い花や 辛夷(こぶし)や雪柳の白い花も 周辺の緑と 最高潮の調和をしていました 十三湖や小泊を抜け 山道に差し掛かります すると急激に下るようになって眼下を見ると 風力発電の 大きな白いプロペラが 何基も見えています 津軽海峡は すっかり春めいて 暖流と寒流がぶつかり 一直線に見える海流の戦陣も ゆらゆらと揺れ  対岸の北の大地・松前まで伸びていました
 
 

 
                                                                                                  風力発電の白いプロペラ この突端が竜飛岬 灯台がある
 
 
 三厩(みんまや)から松前まで 漁船が出ると言う金木(かなぎ)の友人の薦めで 龍飛の先端から 急にバックして急ぎます 幸い松前に行く船がありました 松前漬け用で 烏賊の加工品が納品だと言う どうにか頼み込んで漁船に乗せて頂きました 今日は特別に 優しい海でした 中には急速艇のような漁船が行き来しています 聞くと本マグロ取りの漁船だと 時々魚影が見えます 言われるままに 退屈しのぎで 釣り糸を垂れてみました さすがに船乗りは違っていました ブリやシマアジを引き上げていたのです 僕はやっと曳きが来たと思ったら 何と小さな太刀魚でした 船長は微笑むばかりです そんな暢気な船旅も2時間で終了し 松前の大磯と言う漁港に着きました
 
 鎌倉時代の世から 北方の守り要として栄えた松前は 丁度櫻満開 しっとりと落ち着いた小さな街です 街中が櫻 櫻です こんな小さな街に 聞けば櫻が一万本あると言っていました ほとんどの櫻が満開です 連休も終わって 静けさも 私の何かを大いに刺激しているようです 一番いい時期に来たなぁ と思わず感激しました 漁港近くの唐津(九州から移住して来た人がつけた街名)には 紅い色の山櫻と言う風情の 蝦夷山櫻がびっちりと咲いていました 櫻並木をゆったりと歩いて行きます 松前城址(福山城)へ 城址には様々な種類の櫻がありました 特に緑色の櫻である御衣黄(ぎょいこう)があったのには驚かされました 小さな城だけれど どっしりとして威厳がありました 天守閣に入ると 福山の山車人形がそのまま保存されています 三階の天守閣に登り 津軽海峡を眺めていると 遠い九州や瀬戸辺りから 移住して この地に根差した人々の思いまでが ぐぐっと迫って来ました 再びうらうらと歩き始めました 江戸時代の街並みを再現したような松前藩屋敷は まるで江戸時代にタイムスリップしたようです 松前藩主代々の墓所に行く途中 櫻資料館がありました 入場料150円を払うと 櫻の資料に圧倒されます 幸せな思いで充たされました そこで無料の濃い茶が出されていました 一年中出していると言うのです この街の人達の櫻に対する思いが じんじんと伝わって来ます ほとんどの人々にとって 望郷の念そのものが 豊かな花を咲かせたのでしょう 館内で 駅前の竜野屋さんが出店していて 500円で櫻の餡蜜(あんみつ)を頂きました 店の人に聞くと 街には300種類の櫻があって 未だに新種を作り続けている人が 数人はいるとおっしゃっていました 櫻の見本林があるくらいです 従ってこの街にしかない櫻も 多くあるのです 何もかもゆったりしていて 如何にも北海道らしく思いました
 
 午後遅い春の陽光が否応なく降り注ぎ 松前に来た一番の目的の御寺に向いました そこは光善寺 見事な古刹です ここに樹齢200年の名木がありました この櫻は 城下に住んでいた鍛冶屋親子が 吉野山の尼さんに貰った櫻であると伝わっています 余りの老木になって弱っていたので それを切り倒そうと言う前日 夜半住職の元に 櫻模様の着物を羽織った娘が現れ 「私は明日死ぬ身です 私にどうか血脈(けつみゃく=極楽に行ける証文のこと)を与えて下さい」と言う 住職は血脈を与えるのですが 翌朝起きてびっくり 死に掛けていた櫻に 与えた筈の あの血脈が着いているではありませんか そして漫々の花を 精一杯付けていたのです 前夜現れた娘は この櫻の精だったのかと 住職ははたと気付いたのです 途端に切り倒すことを止め 逆にその櫻を 盛大に供養してあげたと言うのです 以来その櫻は『血脈櫻』として 地元の誰からも親しまれるようになったのでした 花は大山櫻で 北海道らしく 紅の強い花です 精霊たちが宿るようにして 威厳に満ちて 静かに華やかに咲いていました
  
  

                                                                                                                                                               血脈櫻
 
 
  他の阿吽寺や上国寺や龍雲寺にも行きました どの御寺にも名木らしき櫻が咲き誇っていました この街は 両側を清冽な川の流れに挟まれています 小松前川と大松前川 こんな清らかな水が 多くの櫻を育んでいるのでしょう 未だ早い春の落日が迫っていました 足元を見ると あっと驚きました 関西ではよく見掛ける白爪蒲公英(しろつめたんぽぽ)が咲いていました 雑草まで 望郷の念があったのかと 胸に迫り来るものがありました 津軽海峡を通る海底トンネルが 函館よりの福島町を通る為に この松前は 開発の波に乗り遅れ ぽつりと取り残されています 余程その気になって来なければ 来れなくなった街かも知れません 今では そんな所為もあって どことなくウラ淋しい櫻の街です あのお城に お嫁入りした京都からの姫君を慰める為に 櫻を植え続けたと聞いています そんな淋しげな街でも どこまにでも優しさに充ちていました 夕陽は遠く津軽半島の脇へ どすんと落ちて行きました 市内の温泉旅館矢野さんにお世話になります 漁り火が点り始めた海峡を観ながら 露天風呂に入っていると 北の 櫻の街の人々の温かさに すっぽりと包まれる思いがしました 北の大地と荒海の幸が これでもかと ふんだんに出されました お酒も少々頂きました 何だか櫻の夢を見そうです 幽かに聞える磯の音を聞きながら 長い旅の疲れからか 深い眠りに着きました
 
 翌朝早く出るバスに乗って 国道228号線をとろとろと走りながら 函館へ 駅前で路面電車に乗り継いで 五稜郭へ それでも未だ9時を過ぎたばかりです 洋式のこのお城で 幕末最後の決戦がありました 榎本武楊や土方歳三 故郷を追われて来た会津藩のオトコ達の雄たけびが聞えて来そうです 今日は花曇り 美しい城割に 染井吉野が満開になっていました 染井吉野が最も似合うところは 私が住む千鳥が淵近辺か弘前城 それぞれに染井吉野は似合うと思っていましたが 五稜郭にも ぴったりな花でした 普段染井嫌いの私でも 久し振りに染井吉野を堪能しました 花霞だろうか花曇りの所為だろうか 函館山は見えませんでした 花冷えがする為に 昼早いうちに 機内の人に
 
 
 未だ冬にもなっていないうちに 櫻見物の記事はないだろうとお叱りを受ける覚悟で書きました いつか行ったコースを 記憶を辿って書いてみたのです 文化の日だから 九州大宰府に開館した 九州国立博物館の話題か 色々考えたのですが やはりこの記事にしました 今日リハビリを始めて ようやく杖なしで歩いたのです しかも1キロ近く でも未だ未だです 私は この櫻の記事を書くことによって 春には 何とか櫻を観に行きたいと 覚悟と強い希望を優先したのでした どうかお赦しを お願い申し上げます  
 
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