やさしい眠りの花たちへ

 時々鎌倉に出向く 当社は 東京駅に近いせいか 電車を利用するのが案外便利である この時期に行く古都のお寺と言えば 先ず来迎寺だうと思う 来迎寺には樹齢百数十年と言う合歓(ねむ)の大木がある これ目当てに行く この時期様々な花達がお見えするが 中でも合歓の木
は最も不思議な花であろう 花は繊細過ぎてまず絵になりずらい 葉っぱは細かく夜しぼむ そして朝の陽光にあたると 再び徐々に開いて来るのだ 淡薄紅色をした 絹糸を束ねたような美しいやさしい花で 古くは万葉集にも歌われた花だ 7月7日早朝顔を洗いに行き しぼんだままの合歓の葉っぱを眼にこすりつけ それを川に流す 北日本の日本海側エリアでは それを『ネブリ流し』と呼んでいる 夏場の農作業における 体力の温存をうためにある 行事の一つだ これを原型として発展成長したのが あのネブタなのだ 眠気と言う 悪魔を祓うことによって 秋の収穫を予祝する そんな朴なカタチの祭りがあるのだ
 
 昼は咲き 夜は恋い寝る 合歓木の花 君のみ見めや戯奴さえに見よ
                            紀女郎(万葉集巻8)
 
 象潟や 雨に西施が ねぶの花  松尾芭蕉 (奥の細道)
 
 鎌倉はいつでも観光客で一杯である 私は人の流れに沿って歩き 小町通りの中ほどにある『冬青(そよご)』と言う店によく立ち寄る そして繊細な合歓の花を反復思い出し 今日も冬青の懐石料理は ちょうどいい按だと感心するだろう ささやかでも満たされた思いが 後々まで残るだろう
 
 太陽の加減で開いたり萎んだりする花に 睡蓮もある スイレンのスイとは読んで字のごとく眠る時の睡である 夕刻には萎む これも古い花で古代から栽培されて来た 主に古代エジプトにあって 花は太陽の花であり 復活の花として珍重され 5000年の歴史があるから驚きだ 壁画や彫塑に その面影が残っている 又この花は画家モネが こよなく愛した花であって 近年日本に造られたモネの庭にも 見事に睡蓮が咲いている しかも本場フランスのジヴェルニーにあるモネの庭から頂いた 青い睡蓮が咲いているのである 茎をほんの少しだけ 水面に出している 大きく茎を出す蓮の花との違いはこれだ 蓮は茎からして見事に露出し開花するが 睡蓮は楚々として水辺に咲く
 
  睡蓮のかげ 惜別の 日をはこぶ    原 裕 (自選集)
 
 更に太陽の光線に関係して 咲いたり萎んだりする花に 酔芙蓉がある 朝開き出した花びらは 真っ白であるが 午後次第に 淡紅を差して来る夕刻近くには鮮やかな紅色になり 夜暗くなった頃は 急激に萎む 何とも色っぽい花で 越中八尾の風の盆には この花しか似合わない気がする
 
     『風の盆恋歌』 歌手石川さゆりの歌
 
    蚊帳の中から 花を見る
    咲いて はかない 酔芙蓉
    若い日の うつくしい
    私を抱いて 欲しかった
    しのび逢う恋 風の盆
 
 
     『おわらの歌謡の中にある歌』 本場八尾の民謡
 
    春風吹こうが 秋風吹こうが
    おわら恋風 身についてならない
 
    見たさ逢いたさ 思いがつのる
    恋の八尾は オワラ 雪の中
 
    風の盆 あの夜の人を 
    思い出させる オワラ 酔芙蓉
 
   高橋治が書いた小説『風の盆恋歌』が圧倒的に指示された 中年
   男女の不倫を書いたものだった それから歌謡曲なったり映画にな
   ったり 本場歌謡にも登場したりして 影響はすごく大きかった 最も
   影響を受けたのは おわらの踊り部隊そのものである お陰で 祭りが
   終わって 三々五々散り散りになってから始まる 真夜中の町流しが
   密やかな 素晴らしいものであったが 駄目になったと思う 歌謡曲が
   流行ってからと言いものは 観光客で大混雑するようになった 以前
   の様子とはまるで違い うっとりするような町流しの雰囲気を壊してし
   まったように思える 残念でならない 
 
 花にも 眠る時が必要なのであろう 私には 寝る時間さえない時が多い比較的昼はヒマであるが 夜は一変する 海外投資部隊が忙しくなるのだ ほとんど眠れない時が多い 神経をすり減らす もともと睡眠が取れない方であったが 年とともに 不眠の傾向が益々強くなった こんな時眠る花々を思い出す みなやさしく美しい花々である 疲弊したこころを慰めてくれる
 
 そんな折 独りでぼやっとしたい時には 鎌倉に行く 季節の花々によって行く寺を選ぶ 鎌倉山のてっぺんにある棟方志功の美術館もお気に入りだ 方の肉筆画が特にいい 鯉の瀧昇りとか天女の顔が好きだ こころに血がたぎって来るから うれしい ただそれさえ出来ない時 ストレスが異様に昂ぶる 従って鎌倉に行けると言う事は至極有難い一瞬のなのである
 
 
           口絵 モネの絵 モネの庭の睡蓮(北川村HPより)
               合歓の花
               酔芙蓉 上から 昼~午後~夕刻
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