代々に仕えて 橙

 当家には三人のお手伝いさんがいる 三人とも大層な年寄である二人は 親子三代に渡って仕えて来た 一人は二代に渡ってである何かしらの事情があったものの 現在三人とも 至極幸せな境遇だ上が83歳 中が76歳 下が65歳である そう言う意味では 私は純粋に一人生活ではない 父が逝ってから お手伝いさんの高齢を無視出来ないように思われて 三人に相談したことがあった すると三人とも 途端に重い顔をしたのである ん?どうしてと思った よくよく聞いて見ると ここにいるのが 至福の時だと言う 父は 一般社員と同じ扱いで ずっと厚生年金に加入して来たから 三人とも 高額な年金を 今は頂戴している

 

 話し合った結果 よかったら ご自分の身体が続く限り つまり死ぬまで ここにいてくれればいいと言った 

 

 普通に給与も出している 三人とも近くに それぞれに違うマンションを持っている この一番高い家賃の場所にである 父がそれぞれに買って与えたと言う 離婚したり様々な事情があったことも よく知っている がこの年になると 曾孫までいて 過去の怨憎も何もないのであって 今は何不自由ない 今更働くこともないのだが 違う 働く意欲が至極旺盛なのである

 

 私が よかったら死ぬまでいてと言った時の あの笑顔ったらない それが キッチンには 人様が来客のない場合以外 誰一人入らないここだけは 私の天下だ みなそれぞれに持ち場があって 勝手に来て 勝手に帰っている 束縛しない 私は彼女達を必要としているからと 全面に押し出しているから 彼女達なりに 応えてくれている

 

 まったく邪魔にならないから 不思議である 掃除・洗濯・キッチン・庭の手入れ・各部屋の花飾り・電話受付と対応・郵便物の管理等・ゴミの処分・来客時の応対と案内・仏事慶事の対応・接待時の応対・様々な仕事がある 朝から夕方まで 流れるようにこなして行く 子供の時から ずっとそう言う風景だった 私達は 喧嘩一つしたことがない だって 言うことがないのだから お互い様に多分そうかも知れないと思っているが・・・・・・ むしろ偶に 助言を聞く場合が多い

 

 庭木に 橙がある 橙って言うのは おかしい果樹だ 新しい実がなっても古い実を落とすことはない 新旧同時にあるのだ だから古来代々続くものとして 子孫繁栄の意味を持って 珍重されて来た この橙に 三人の姿はよく似ているから おかしい 家ではポン酢に使っている ポン酢はなくてはならないものなのだ

 

 三人は 自分達で ローテーションを作って 適当に休んでいるが それでいい もっと言えば 足腰が立たなくなったら ここに転居して来なさいと言っているが そればかりはと遠慮気味だ 本当に よく働く 毎日感謝しても足りないくらいなのだ 83歳の長老格も 矍鑠(かくしゃく)としていて 見ているだけで こちらが勇気付けられる 私の代々がお世話になり 愈々今度はこちらがお世話をする番だと思う 最低でも二人は日中いるが 何か前例先例を聞く場合等は この限りではない 女性が働くと言うことは並大抵なことではない よく分かっいる積もりだ いつまでも 元気であって欲しいと 仏前で 朝の勤行をする中に ちゃんと入っている祈りの一つになっている

                    

                    口絵 中宮尼寺 弥勒菩薩さま

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