夏至 来たるらも

 今日は夏至 一年で一番昼が長い日である ちょうど満月で 南西の方角に 雲に隠れて あわれっぽく ただぼんやりと見える 冬至には小豆入りのカボチャを食べるが 夏至には何もない 北の国フィンランドでは 短い夏を祝う夏至祭がある Juhannasである 村独特の篝火(かがりび)を焚いて祝う 地平線に 太陽が一日中見える 北の大地に生きる人達の歓びなのであろう 日本には何もない 普段の祭りすらないのである 仕方なく 今晩は昨日買って来た食材で 適当に作った山椒の実とじゃこの佃煮 鮎塩焼き 駄々茶豆茹で 冬瓜のXO醤煮 茄子の豆板醤炒め 新生姜の酢漬け ざっと調理して 今夜も独りで晩餐である 酒は『森伊蔵』 芋焼酎である 大きく割った氷に入れるカラカラァンと音がして 見るからに 透明で美しい 満月は忍び寄っているかも知れない 

 

 そう言えばこの時期 必ず思い出す歌がある 伊勢物語の中にある歌だ ある男が 都に住むには要がなくて 東国へ旅に出た 三河の国・八橋と言うところに着いた 水行く河 蜘蛛の手なれば 八橋と言うらしい 水辺のほとりで 乾し飯を食べていると ここには 面白く花菖蒲が咲いていた 近くにいた男がかきつばたと言う五文字を句の上にそえて 旅の心の歌を詠めと言った そこで男は

 

 らころも つつなれにし ましあれば 

               るばる来ゆる をしぞ思ふ

 

 と鮮やかに詠んだ そこにいた人はみな感動のあまり 突如泣いてしまったとある 能『杜若』にも出て来る話である 徐々に いい気分になる 風が 庭の山紅葉の方角から さわさわと吹き始めていた 月満月にして 満ち来るものを いまだし

 

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