紅花哀歌

 この時期 アザミに似た 紅花が花屋の店頭に並ぶ 

但し本場・山形の紅花とは全く違うようだ 店頭のは葉が丸い 山形のは 葉の先端が鋭く尖っていて 当たったら いかにも痛そうだ 

棘もささくれだっている サフラワーと呼ばれ 健康食品にもなっているこの紅花の主な生産地は山形の内陸部・谷地を中心とした地域であった 

上川の流れに沿って 紅花畑が点在している 朝露が出る直前に 花を摘み取らねばならぬ 

朝露が出る寸前の時間だけは 棘は痛くないからだ 

花穂は黄色で 酸化すると紅色になる 花を摘み終わったら 紅餅と言って 花弁を発酵させて 粘り気を出してから丸めて乾燥させる 

乾燥した製品を 俵に入れて 馬の背の左右に一つ振り分けることを 一駄と言う数え方 

一時の最盛期には何十万駄と言う紅が出荷されたと言うから驚きである 

最上川を下り 酒田から北前船に乗って 京都に入った 

れが加工され 芸子がつける口紅になったり 和服の染料になる 

紅花は一度染汁につけても真っ赤にはならない 

最初は 藍色の甕覗きと同じで 浅いの肌色になる その染を重ねると ようやく鮮やかな紅色に染まる

 

 水上勉氏の芝居に 紅花物語と言う劇があって 劇中雪の山道に女の子が 紅花籠を落とす場面があった

 紅花を落とすと 雪は真っ赤に染まったと 最初書いたらしいのだが 真っ赤に染まるわけがないと

 最上紅花史の研究の今田信一氏に指摘され 後で 余儀なく訂正をしている

 劇にも出て来るが 紅花に相当な劇的要素があったらしい

 摘む悲劇 紅餅を作る悲劇 運ぶ悲劇 商いの悲劇 紅を唇に塗る悲劇 様々な劇的な要素が生まれた 

それほどまでに 幾多の悲劇を繰り返しながら 需要の度合いが大きかったのは 何が何でもと言う権力者の欲求が強かったからだ 

それほど大掛かりな流通を通すのは時の為政者の権威に頼るしかない 

紅の道の流通経路は すべて時の権力者に押さえられていたからなのだ 

 

 それは権力者が 権威の型として 飽くなき美への憧れが許された証でもあった 

権力の需要が切実だったせいだと言ってもいい

 高松古墳に出ていた美人が 紅の衣を纏っている 

それもまた権威の象徴の中に紅があった反証 

古代から紅の需要が旺盛なのは 紅は遠くシルクロードから渡り 中国・朝鮮と経て 日本に 渡来僧を通じてもたらされたと言うエピソードの権威があった 

単なる遥かなるロマンの産物と片付けられない

 源氏物語に 光源氏が 末積花と言う  名の女性と色恋に落ちようとしていたが 

の末摘花こそ 紅花の異称に違いない 然しやや冷笑して末摘花と言ってはいないか

 古来ら幾多の悲劇を産みながらも需要が旺盛なのは 権力の象徴でしかなかったからだ

 紅色は人を高揚させ興奮させる 着る側も着せる側も唇に塗る側も塗らせる側も

 皆そのような情が横溢したのを 為政者は決して見逃すはずはなかった

 色彩と権力 怖い話である

 

 今読んでいる旧約聖書は 十数年経っていて ただ積んで置くだけだった 

失礼な話であろうか いい機会を得た 是非理解しながら 読み終えたいものだ 

の本には特別に皮製のカヴァーが着いている 

深紅の紅色をしている 今宵一瞬に 紅花について脳裏をかすめた 

雑多なことばかりだが ここに紅の花を 書き記しておきたくなったから 書いた 

ようやく梅雨の雨か 降り止まず 庭木に シトシトと密か雨音がしている

 

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