孤愁~サウダーデ

 

 故新田次郎は 気象庁に勤務しながら 主に山岳小説を書いた作家だった 

日本百名山の名づけ親でもある 歴史小説もあって

 彼の絶筆になった歴史小説の一つに 『孤愁~サウダーデ』ある

 ポルトガル人文筆家モラエスをモデルしたその小説は 未完ではあるが間違いなく名作の一であろうと思う 

小説のモデルになったラエスは 誰あろうラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と並び称される 日本を世界に紹介した 

日本にとって大恩人の一人である

 

 モラエスが72歳で生涯をとじるまで こよなく日本を愛し 妻ヨネを通して 望郷の念を持ち続けた人であった 

妻ヨネは女郎だった 当時神戸にあったポルトガル領事館副領事だったモラエスは 

ヨネを身請けして 純和風結婚式を挙げている 幸せな日々も束の間 10年後にヨネは心臓病で急死してしまう 

モラエス59歳の時 ヨネは38歳であった 

モラエスは突然領事を辞し 憧れてやまなかった亡きヨネと愛する 故郷徳島を 終の棲家と定め 

徳島に移り住む 眉山々麓の伊賀町に 生涯純和風の生活を送る 姪のコハルをお手伝いさんとして雇い 

度はペンを走らせる日々 憧れの外国人先輩作家ラフカディオ・ハーンを日に10回も読み返しながら 

同様に 日本を世界に紹介する

 文章を 故郷リスボン中心に送り続けた やがて 姪のコハルも死に 

モラエスもその一年後に亡くなるが かわいい墓石がある 

徳島市内潮音寺に 三人とも葬られ 仏教式の墓石は モラエスを中心に左右に 

ヨネとコハルが ともに永遠の眠りについている

 

 新田次郎が着目したのは モラエスが持ち続けたであろうサウダーデである 

直訳すれば 愁いとかノスタルジーの意味になるらしいのだが 

新田は 『孤愁』(サウダーデ)を持った男として ポルトガル人モラエスを取り上げた 

サウダーデこそ ポルトガルの国民性を表現する大切な美意識であり感性であるらしいのだ 

新田は自著の中で 時々郷愁を主な主題にしている 

モラエスの感性と新田のそれが 見事に呼応を始めて 響きあって 

あの小説が書かれようとしていたのだ 

残念ながら未完のままであるが 

新田はモラエスの哀歓を 孤独なる愁いと解釈して サウダーデを 孤愁としたのであろう 

あの作家らしい見事ないい訳だ

 

 ポルトガルに国民的な歌である ファドがある 

哀愁に満ちた歌で 涙の数だけ ファドがあると言う

 大航海時代 ポルトガルは移民大国であった 

宣教師や開拓者を 世界中に送り込んでいた時代から 

別れの哀しみや追慕の念が 綿々として続き その思いを込めた歌が ファドだったのであろう 

孤愁(サウダーデ)とは ぬぐいさることが出来ぬ胸の痛みであり 遠く去ってしまった人への愛惜だった

そして鎮魂の歌でもあったのがファドなのであろうか 

モラエスのファドは 亡き妻へ 故郷ポルトガルへか 

 

 国民性って すべての国にあるが 我が日本は何であろうか 侘び寂びでは決してないと思ってい

る 韓国は 『恨・ハン』であるらしい フランスでは 北のパリと南のプロヴァンスでは元々国が違っていた

 先ずその国の国民性を理解して 何事もそこから解釈していきたいものだ 

今日は時間を見て 旧約聖書を読み耽った 

夕刻アタマをよぎったのは クリスチャン宣教師だったが 

そこから眉山山頂にあるモラエスの資料館を思い出し 

新田次郎を偲び サウダーデをしたため それを書きたくなっただけある

 

 

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